「DHA・カルシウム・ビタミンA・ビタミンB群」~胎児の食育~
胎児の食育に必要な栄養素はまだまだあります。
それが、
・DHA
・カルシウム
・ビタミンA
・ビタミンB群
です。
ここではその栄養素について解説していきます。
DHA
魚油に含まれる成分の中には、DHA(ドコサヘキサエン酸)と、EPA(エイコサペンタエン酸)と呼ばれる代表的な二種があります。
いずれもオメガ3と呼ばれる脂肪酸の仲間であり、青魚(アジ、イワシ、サンマ、カツオ、マグロなど…)に多く含有されています。
DHAは世間的にも認知度の高い栄養素といえるでしょう。魚を食べると頭が良くなる、という話も有名ですよね。
その由来となっているのが、このDHA、さらにEPAです。オメガ3には脳の機能を高めて、知能の向上を促す効果があるという説があります。
ノルウェーで行われた2003年の実験によると、妊娠18週目~産後3カ月までにDHAとEPAを多く含むタラ肝油10mlを摂取した590人の女性の子どもは、四歳になったとき、その他の子どもと比較してとりわけIQが高くなったとのこと。お母さんからオメガ3の栄養をもらった子どもは、問題解決能力や、理論的に物事を考える力が強くなりました。
そもそも母乳にはDHAが豊富に含まれており、赤ん坊の知能の発育に役立ちます。とりわけ日本人女性の母乳の中には、欧米の人々の約2~3倍ものDHAが含まれているとか! 青魚を日常的によく食べる食生活にその背景があるのでしょう。
もっとも、魚を食べなければDHAもEPAも欠乏します。生まれてくる赤ん坊のために、意識してこれらの成分を摂取するようにしたいものですね。
カルシウム
赤ん坊の発育に欠かすことができない栄養素の1つに、カルシウムがあります。骨や歯を作る役割があり、胎児は母体から胎盤を通して30g程度のカルシウムをもらい、これらを形成していきます。
産後もまた、毎日210㎎のカルシウムが必要となります。子どもに十分な量を与え、またママ自身にもこの成分が欠乏しないよう注意しなければなりません。
目安として妊娠中は一日に900㎎、産後の授乳中には1100㎎を摂取したいところです。
カルシウムの役割は、上にも紹介したように主には骨を作ることですが、それだけではありません。細胞や血液や筋肉や神経が正常に機能するためにも、全体の約1%のカルシウムが必要となります。
もし不足してしまうと、毛細血管・筋肉の収縮や弛緩にも悪い影響が出てきます。妊娠中、よく足がけいれんする場合、カルシウム欠乏の疑いがあります。
さらに、有名な話ですが、カルシウムにはイライラを鎮めたり、精神を安定させたりする役割もあります。気持ちが落ち着かない時には、意識して摂取するとよいでしょう。
妊娠中も、産後も、健やかに過ごすためにはカルシウム摂取が1つのカギとなります。食品によって吸収率が違うので、約40%と効率的に吸収できる乳製品がおすすめです。その他、小魚や青菜でも20%~30%の吸収率でカルシウムを摂取することができます。
より効率的な摂取を目指すならば、吸収率を補助してくれる食品と一緒にとるとよいでしょう。レモン、酢、大豆製品など、これらとセットで摂ることができれば、理想的です。
ビタミンA
細胞が増えたり、分化したりするためには、ビタミンAという成分が必須です。
とりわけ妊娠初期の赤ん坊の骨や神経系の分化には、非常に深いかかわりがあります。胎児が活発に細胞分裂を繰り返す時期には、なるべく多く摂取したい成分というわけですね。
もし欠乏してしまった場合、赤ん坊の成長にも影響が出る他、感染症のリスクが上がります。
ただし、過剰な摂取は問題とも言われています。実際、ビタミンA誘導体を使っての皮膚角化症や乾癬、ニキビ治療は妊娠前はもとより、妊娠中は禁忌です。実はビタミンA誘導体やビタミンAの異性体は自然界に存在しない成分のため、胎児に奇形が起こるリスクを高めてしまうんですね。ただし、これはあくまで手を加えられたビタミンAに限ります。
天然のビタミンAには、催奇形性の危険はないという説が有力です。ただし、医薬品として販売されているような、合成のビタミンAには注意が必要となります。必ず医師の診断を仰ぐようにしてください。基本的には天然食材から、あるいは自然の食品をもとに作られたサプリメントから摂取するべきでしょう。
よりビタミンAの効果を上げたいならば、さらにβ-カロテンと呼ばれる成分と併せて摂取することをおすすめします。緑黄色野菜に多く含まれ、ビタミンAの働きを活性化させる役割があります。セットで摂って、赤ん坊の発育を応援してあげましょうね。
ビタミンB群
ビタミンBにはいろいろな種類があります。ビタミンB1、B2、B6、B12、パントテン酸、ナイアシン、ビオヒン、葉酸…これらをまとめて、ビタミンB群と呼びます。いくつかの種類を複合的に摂取すると、吸収率が上がり、効率よく働くメリットがあります。
糖質・脂質・タンパク質といった成分は、体内で吸収・消化されることでエネルギーを生み出します。この代謝の活動のために、ビタミンB群の摂取は必須となるわけです。
とりわけ重要となるのは、B6とB12、そしてビオチンと葉酸です。中でも、ビオチンは妊娠初期に重要な成分で、動物実験の結果によると、欠乏すると赤ん坊が奇形になってしまうおそれがあります。
そもそもは腸内細菌によって作られるので、欠乏する心配などないといわれてきましたが、近年の調査で人によってはそのリスクがあると判明してきました。
ビタミンB6はママの精神面を安定させるために大事な成分で、脳の神経伝達物質の原料となります。不足した場合、イライラして落ち着きがなくなるという症状が出てきます。これは赤ん坊にとっても同じことで、母乳からビタミンB6がうまく与えられないと、夜泣きが激しくなることも…。逆に十分な量を与えていると、子育てがとてもラクになります。
またビタミンB6には、妊娠中のつわりを軽減してくれるという嬉しい役割もあります。
妊娠前から産後まで、魅力が多い栄養素です。
しっかりと摂取すれば、ママとしての生活が変わるかもしれません。